『偶然と想像』

邦画

(ネタバレ多少含みますから…でも観たくなるはず)

小説の短編集はいいね。区切りがあるから。

物語の一部にズームして、わずかな驚きのオチに至る…この小刻みな繰り返しがいい。

でも、映画の短編集は何故かイマイチなのが多い。

様々な監督が撮った短い作品を何本かまとめてポン。

それぞれの個性を垣間見れるけれど、なんだか、「私の作家性どう?」感が強くて、苦笑いしてしまうことが多いんだよなぁ。

そんな個人的偏見をぶっ飛ばしてくれたのがこの短編集。

結論から言うと、3回唸り声を上げた。

第1話「魔法(よりもっと不確か)」古川琴音vs中島歩vs玄理

仕事仲間で親友の女2人。

1人の恋バナの相手が、もう1人の元カレという偶然。

その真実を言うのか言わないのか、元カレに未練はあるのか、友情と本心のどちらに生きるのか…。

とにかく、古川琴音ちゃんのヤバ可愛さに惹かれる。

こんな小悪魔に一度はボロボロにしてもらいたい…。

と、自らの癖(へき)を発表。

そんなことより、舞台挨拶時に玄理さんが言っていた琴音ちゃんの印象。

「奈良美智さんの絵の女の子がそのまま出てきたような…」

これ、めちゃくちゃドンピシャすぎて、未だに頭から離れない。

そんな女の子が発する”あの”ひと言。

その瞬間の自分の唸り声に驚いてください。

第2話「扉は開けたままで」渋川清彦vs森郁月vs甲斐翔真

就職をダメにされた教授にセフレ人妻を使いハニートラップで復讐を仕掛けようとする男。

その人妻と教授の扉を開けた部屋での攻防戦。

とにかく、長セリフの長まわし。

濱口監督独特の演出方法が垣間見れる淡々さ。

これを知らないと、棒演技…なのか?…と勘違いしてしまうほど。

仕掛ける女と癖(へき)で戦う教授。

どんな結末で部屋を出るのか、偶然はいつ訪れるのかと、じ———-っと集中していたら、全然予期していなかったところで、黒沢清ばりのズームアップ。

その瞬間の自分の二度目の唸り声に驚いてください。

第3話「もう一度」占部房子vs河井青葉

同窓会で故郷に戻ってきた女がエスカレーターですれ違う女。

思わぬ再会から始まる探り探りの真実。

今日一番大きな声で言いましょう。

この展開、秀逸すぎる!!!

「あ-久しぶり-元気だった?-いま何してるの?-へぇ-そうなんだ-」

みたいな、何にも重みが無い会話…よくある。

その誰もがふわっとしておきたい感じにズバッとメスが入る一瞬。

その瞬間の度肝の抜かれようは半端ない。

三度目の唸り声は、初めて言葉に出して言った「えっ?」と共に自分で驚いた。

そこからのコント…まさにコント状態に、どんな感情で見ればよいのかパニック。

でも、体半分前のめりで話に食らいつく。

全3話の中でも圧倒的に面白い。

参った…映画の短編集への感覚がひっくり返った。

濱口監督…やるじゃん。

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